裏塩耳袋W
| 風の音は時として人の声のをまねたいたずらをするもので、誰かに呼ばれたように思えて振り返っても、そこにはただ風が吹いているだけと、歌の文句のような経験は誰しもあることでしょう。 冬の季節に多いロシアの恐い話。仕事を終えての帰り道、空には満点の星。「今夜は冷え込むぞ」と帽子を深くかぶって、バスターミナルからアパートへ向かって歩いて行くと、誰かが呼んでいるような声がする。 ふと立ち止まって周囲を見渡すと、自分と同じように家路を急ぐ人たちが黙々と歩いているだけ。 「気のせいかな?風のイタズラ?」と気を取り直し、また歩き出すと、今度ははっきりと自分の名前を呼ばれた気がしてまた立ち停まり、「はてな?この声には聞きおぼえがあるぞ!」。 ふと彼の脳裏に甦ったのが150km離れた町に住むお姉さんの声。「そういえば、子供の頃ここでよくお姉さんと一緒に遊んだものだ。」と目の前の公園に目が行き、「しばらく連絡を取っていないけど、元気で過ごしているのだろうか?」と、しばし懐かしい思い出などを浮かべながら薄暗い公園を眺めてから家に戻りました。 「たまには電話をしてみようか。」とお姉さんの家に電話をしたもの誰も出ない。「きっと一家でどこかに出かけたのだろう。」と電話をあきらめたものの、妙に懐かしい気持がこみ上げてきて古いアルバムを開いて、奥さんや子供達にお姉さんとの懐かしい思い出などを語っていました。 夜もふけて、「そろそろ寝ようか」と思い出話をお開きにした頃に電話が入り、「今頃誰だろう?」とでてみると、お姉さんの夫からの電話。「彼女は夕方、自動車にはねられて、先ほど息を引き取った。」・・・
私は誰? ロマノフ王朝の末裔だとか、エカテリンブルグで革命軍に殺された皇帝の息子だとか、本当は飛行機が墜落せずに生きていたガガーリンだとか、精神病患者を扱う施設にはいろいろな著名人がいるそうです。 数年前のこと。ウラジオストクの大きな街ルガバヤのアパートに 、どこから来たのか14−5歳の少女が現れ、「私はこの部屋に住んでいるのよ。あなたは誰?」 いきなり言われたほうもびっくりします。自分だって20年もその部屋に住んでいたのですから。 「何をとぼけたことを言っているんだね、この娘は。」 気味が悪いので、同じアパートに警察官をしている住人がいたので、連れて行ってもらおうと、直接自宅に電話して来てもらいました。 その少女は警察官の隣人を見るなり。「あら!あなた イーラの弟のボロージャね。この人たちが私の家に入り込んでいるのよ。」いきなり少女に言われて警察官もびっくり。彼の名前と7歳年上のお姉さんの名前を言い当てられたのだから。 「何を馬鹿なことを」と思う一方で思い出したのは、かつてその部屋にはマリヤという少女が住んでいて、彼のお姉さんと同級生だったこと。彼が7−8歳の頃に海に泳ぎに行って行方不明になり、その後マリヤの家族もバラバラになってこのアパートから出て行ってしまったこと。 もし生きていたにしても40代半ば、こんな少女であろうはずも無い。 彼の記憶の中にあるマリヤの容姿とは異なる顔つき。それにしても、この少女は彼が幼い時のことなどをよく知っている。 彼が子供の頃に飼っていたペットの犬の名前や、お気に入りのおもちゃに名前をつけていたことなど、次々と言い当てられて足がすくんでしまった。 精神に異常をきたし、病院から抜け出てきた少女だったそうですが、何で二十数年も前に亡くなった人の記憶を持ち合わせていたのだろう? |