かわいい

 5月連休、外国に出かける人たちで空港が混雑するシーズンです。日本を訪れる外国人は延べ数で年間500万人、外国に出かける日本人は延べ数で年間1700万人いるそうです。

 多様な国の人と接する機会は増えても、通訳を交えて会話をする機会を持つ人は少ないと思います。外国に行って、日本語ができる現地の人が通訳に入った場合気をつけなければならないことは、相手が日本語を理解していても、日本人ではないということで、微妙なニュアンスを含んだ曖昧な言葉は避けるべきです。

 できるだけ端的に要点をしっかりと踏まえて能動態で語ることが上手にコミュニケーションできるポイントだと思います。YesなのかNoなのか?はっきりしない言葉は多いもので、誤解を招きかねません。

 もう一つは、日常あまり意識せずに使っているスラングや、流行語で、これも間違えた意味に受け止められることがありますので、気をつけたいポイントだと思います。

 春休みに日本からウラジオストクに観光に来た学生の通訳ガイドをした友人、日本から来た若い女性たちの「かわいい!」に翻弄されたようです。

 「最初は彼女らの美的感覚がおかしいのかと思ったら、日本語の”かわいい”には”滑稽な””不気味な”と言う意味も含まれているんですね。”かわいい”といわれて喜べなくなりました。」

 言われてみると、本来「愛らしい」という意味の「かわいい」が不思議な言葉になったなと気がつきます。角がなくて丸くなっていれば「かわいい」の対象であったり、人畜無害なら「かわいい」であったり、他人に自分を良く見せようとする下心が働いた時に「かわいい」が出たり、網羅範囲が広くなってしまった言葉です。

 「エロかっこいい」。私もテレビで最初にこの言葉を耳にしたとき、関西風に「えろうかっこいい」といったのか?と思いました。私が最初にこの言葉を意識したのはトリノオリンピックのフィギュアスケート男子の代表選考会で、織田選手が代表になった高橋選手を評した言葉だったと記憶しています。

 「エロかっこいい」は「爽やか」の対極だと思いますが、「セクシー」や「なまめかしい」と言うほど魅惑的でもなく、「濃い」と言われるほどきつくもなく、アメリカ人の友人が言うには「ホモみたい」なタイプ?

 日本人観光客が言う「エロかっこいい」に「それは誉め言葉なんですか?」と聞き返したそうです。

 何年も日本を離れていた日本人が聞いたら意味を取り違えるだろうな?と使い方が代わった日本語も多いと思います。代表的なところでは「こだわり」もその一つで、かつては「執着」や「未練」につながるあまり良い意味の言葉ではありませんでしたが、今では「凝っている」「手の込んだ」「入魂」などの代用として真剣に取り組んでいる事柄への誉め言葉のようになっています。

 内側から見ていると当たり前の用に使っている言葉も、外国語にしたと軌道表現しようか?と違う視線で見ると、妖しいニュアンスに置かれている言葉もあります。

 最近、個人的には決して良い言葉ではないと思えてきたのは「優しい」です。金八先生ではありませんが、「優しい」と言う字は「人」と「憂う」でできています。人のことを憂う心が優しいで、そこには自己よりも他を優先する心がなければならないわけですが、「害が少ない」意味として「優しい」を用いるのはいかがなものかと思います。

 「環境に優しい」「人に優しい」なんて言葉は人畜無害どころか、「与えるダメージが少ない」に近い意味で、およそ「優しい」とは言えないのではなかろうか?環境や、他への配慮があるのだから「優しい」の一角をになっているので一概に否定できませんが、「悪影響が少ない」「ロー・インパクト」と訳したほうが誤解が少ない言葉だと思います。

 人の性格を語るときの「優しい」が「ロー・インパクト」の意味では誤解を招きます。日本人の語る「優しい」には自分を中心にした「無責任」「曖昧」「優柔不断」が混同していることがありがちなので、自分よりも相手を優先させる意志がないのに安易に「優しい」なんて言葉を使うべきではないでしょう。

06.4/25