軌道

 ウラジオストクからモスクワまで9000km。広大な大陸を横断するシベリア鉄道。

 さらにそこから乗り継いでヨーロッパの西端まで行くこともできますし、アジアを南に向かって南下することもできます。

 人や物資の輸送にとても有意義な鉄道ですが、せんそうでてきこくのてにおちれば軍事物資や軍隊を運んでくる輸送路にもなりかねません。

 そのため、ロシア国内でも動力車の電源を直流の地域にしたり、交流の地域にしたり、一直線で行けない様に工夫していますが、それが平時の輸送の妨げにもなっています。

 中国は近隣の国と線路の幅を違う規格にして、他国から直接列車で乗り込めないようにしています。そのため、国境の駅では列車の車輪の台座をのせかえて線路の規格に対応しています。

 西ヨーロッパでもフランスとスペインの軌道の幅が1435mm、1688mmと異なるため、新幹線時代以前にもタルゴと呼ばれる軌道の幅を変えられる列車が走っています。

 一つの国内でも日本の整備新幹線など、郡山までは新幹線の1435mm軌道で走り、そこから在来線の1067mm軌道になるため、思い切って在来線の軌道を1435mmにしてしまったり、他の在来線が乗り入れる区間にはレールを3本にしてしまうなど大掛かりな改良をしています。

 周囲を海に囲まれた日本は列車で敵国が直接乗り込んでくる心配はありませんが、陸路で国境を接する国は有事の際の備えが、平時の交易の障壁になっています。

 最近はドイツなど西側ヨーロッパから中国に商品の買い付けに来て、シベリア鉄道で荷物を搬送するケースが多くなり、中ロ国境の満州里が輸送拠点のひとつになっています。

 樹木の乱伐による環境悪化、加速する砂漠化を招いてしまった中国では、木材の伐採に規制がかけられたため、材木のほとんどは輸入に頼っています。

 莫大な森林を持つロシアや、樹木の生育が良い湿暖なベトナムや南アジアなどから材木が中国に入り、加工されて他の国へと輸出されています。

 鉄道は産業の大動脈ですが、異なる軌道の規格が大きなネックになりつつあります。

 遠くない将来、ユーラシア大陸には新幹線が走ることでしょうし、それには日本の技術が不可欠でしょう。国と国との認識の違いや意地の張り合いで、次世代をにらんだ共通の軌道が作れないようだったら人類の文明もまだ坂の途上です。

06.2/17