冬の夜

 冬を語らずにロシアは語れません。せっかくロシアと関わりを持ったのですから、ロシアの冬を体験しなければもったいないです。

 陽気で奔放な夏のロシアと、息をひそめて春を待つ冬のロシア。このコントラストが面白いです。

 日本には明確な四季がありますが、ロシアの大方の地域では冬と夏だけで、春と秋は少々。それも極端な気候です。最近季節感が薄れてきた日本では四季さえあまり意識しなくなりましたが、”歳時記”の国なので、季節に対する感覚はロシア人とあい通じるのではないかと思います。

 セルゲイ・エセーニンが農村詩人と呼ばれていたころの1910年の作品”Поет зима - аукает(冬が呼び歌う)”を紹介します。虐げられた者達に目を向けることが多かったエセーニン。詩の中に出てくるすずめたちは冬に震えるロシアの農民だったのかもしれません。

Поет зима - аукает

冬の夜

Поет зима - аукает,
Мохнатый лес баюкает
Стозвоном сосняка.
Кругом с тоской глубокою
Плывут в страну далекую
Седые облака.
冬が呼んでる 歌ってる。

冬が松風の音で、森を寝かしつけている。

空いっぱいに悲しみをこめて、はるかな国へ流れて行く。

灰色な雲

А по двору метелица
Ковром шелковым стелется,
Но больно холодна.
Воробышки игривые,
Как детки сиротливые,
Прижались у окна.
外ではふぶきが、絹のじゅうたんを敷いている。

でも、この寒さ、陽気な小すずめたちも、

親のない子供のように、窓辺にぴったり身を寄せた。

Озябли пташки малые,
Голодные, усталые,
И жмутся поплотней.
А вьюга с ревом бешеным
Стучит по ставням свешенным
И злится все сильней.
おなかがすいて、力もぬけて。

凍った体を、お互いに、寄せ合っているすずめたち。

はげしいうなりをあげながら、ガタガタと、よろい戸をたたき、

なお吹きつのる雪あらし。

И дремлют пташки нежные
Под эти вихри снежные
У мерзлого окна.
И снится им прекрасная,
В улыбках солнца ясная
Красавица весна.
凍りついたこの窓べ、

荒れくるうふぶきの夜に、まどろんでいるやさしい小鳥。

小鳥たちのみる夢は、お日さまが、あかるく笑っている、

たのしいたのしい春の夢

 和久利誓一先生の訳詩を引用させていただきましたので、私の怪しい訳と違って今回は自信を持って紹介できます。

 ロシアの人たちに”好きな季節は冬”と言えば、間違いなく怪訝な顔をされます。ロシアの人々にとって、冬は長く忌まわしい季節なのかもしれません。冬を越すために夏があるのか、冬を生き延びたから夏が来るのか、樹木の幹や枝が夏ならば、冬は樹木の根のようなもの。

 ロシア人の本音の部分は冬の木の根のように見えないものですが、しっかり根を張っていなければいともたやすく冬に枯れるものです。

 長い冬の夜、暖かい部屋で家族と語りいながら時を過ごす。当たり前の光景ですが、日本では希薄になってしまったなぁと思います。

 ♪雪の降る夜は楽しいペチカ ペチカ燃えろよ お話しましょ♪。北原白秋がこの詩を書いたのはエセーニンが自殺した1925年のことです。ペチカはロシア語で暖炉を意味します。ペチカはなくともコタツで家族団らんが日本の家庭にもありました。

 ♪雪の降る夜は楽しいネット チャットねえちゃん お話しましょ♪。現代ならこうなってしまうのだろうか?

06.1/14