ジーンズ文化

 「今、ロシアのテレビからはコレラ菌とかチフス菌がどんどん出ている。」

 世界的なアニメ映画製作者のユーリー・ノルシュテインが何かのインタビューでいった言葉です。

 もちろんテレビの画面から本物のコレラ菌やチフス菌が出てくるわけではありません。アメリカ的なものがテレビ画面から出てきてロシアの人々に感染することをたとえた話です。

 1999年4月に初めてウラジオストクに行って目に付いたのは暗い夜の街並みに輝く照明入りの”Levi's”の赤い看板でしたが、ジーンズをはいた人など見かけたことがありませんでした。

 コソボ紛争の最中で同じ東方教会のセルビアにシンパシーを持つロシアでしたから、レストランの玄関前に”アメリカ人と犬は入るな”とロシア語で書いた看板が立っている様な時期でした。

 アメリカがいかに横暴で、無慈悲な国で、世界の害虫のような言い方をしつつ、ハリウッドの映画が日本よりも早くウラジオストクで上映されたことを自慢する人々、不思議に思えたものです。

 戦後世代でも、おじさんと呼ばれる世代の日本人は、戦争に行ってきた人たちが社会の中心でがんばっていた時代を経験していますが、アメリカに対して敵意むき出しにしつつもローハイドやコンバットやトワイライトゾーンなどのテレビ番組を見て楽しんでいる姿を見てきていると思います。

 反日を国是にしているような中国や韓国でも日本のアニメは受け入れられているので、日本からもチフス菌やコレラ菌が世界に向けてばら撒かれているようですね。

 ウラジオストクに行ってきた会員さんもジーンズ姿をよく見かけて気になったようで、写真を送ってくれました。

 20世紀にウラジオストクでジーンズ姿を見かけたら、それはアメリカ人で東洋系なら日本人か韓国人でした。日本に来た女性がジーンズを土産に買っていったものですが、いまや”Levi's”も”Lee”も本国USAでは生産せず、中国で生産しているご時勢。

 ロシア女性が日本でジーンズを買うとき苦労するのは、足の長さとお尻の大きさの違いで、足は長いから丈をつめなくとも使いえますが、お尻が大きいのでお尻のサイズに合わせると肥満体用の丈が短いジーンズになってしまったり、骨盤の形状が微妙に違うようで、サイズ合わせに苦労することが多いです。

 「俺はアメリカなんか大嫌いで、あの腐った文化が入り込むことは絶対認めない。」とジーンズはいてハンバーガー食べながら語っているかもしれません。

 個人的な記憶ですが、ジーパンなるものを初めてはいたのは小学校2年生の時で、母が里帰りした時に神戸で買ってきたものでした。当時の日本の衣料品の生地はお粗末なもので、色落ちはもちろんすぐに破れるので、膝や尻に継ぎ当てをした子供なんて当たり前でした。しかも栄養事情が悪いから鼻水たらして、服の袖で鼻を拭くから袖が鼻水で糊付けされてテカテカしていた1960年代日本。

 ジーパンなら丈夫そうだから破れないだろうと買ってきたようですが、確かに丈夫で破れなかったものの、雪が降ると生地の目が粗いので雪が付着して、それが溶けると塗れたまま乾かない、しかも、さらに外で遊ぶから溶けて染み込んだ水気が凍って、家でズボンを脱ぐと腿や尻が霜焼けで真っ赤になっていたものです。

 そのうち、山本リンダがヒット曲を飛ばすと裾の広いラッパズボンが流行るようになりましたが、これも曲者で、自転車に乗るとチェーンにひっかかってボロボロになるし油で汚れるし、中学になると体型が柔道体型になってしまったためにジーンズをはくとわれながら惨めなスタイルに気がつき、時代が平成になるまでジーンズは避けていました。

 ウラジオストクホテル駐車場にたむろしているタクシーの運転手。もちろん本業と別に副業でやっている白タクです。

 こうした人たちまでジーンズをはくようになったのか?と、送られてきた写真を見て驚いてしまいました。

 右側のおじさんは普通のスラックスをはいていますが、襟のない丸首のシャツを着ています。襟のないシャツで外に出るのは下品とされていたので、身なりが怪しい運転手のタクシーは警戒されたものですが、こうした服装の感覚も変化してきているのだなと感心しました。

 中国から国境貿易で入ってきたものだろう、と思っていたら、ロシアにも南部のロストフ州にグロリアジーンズと言うメーカーがあり、ヨーロッパ最大のジーンズメーカーなのだそうです。しかも、日本人の技術者を招いて作ったメーカーで、”Levi's”のライセンス生産もしいます。中国製よりも値段は高いが品質が良いのでそちらを買うそうです。YKKのファースナーを使っているので中国製より高価なのだそうです。

06.5/15