食事

 外国人が我が家に来る。「何を食べさせればいいんだろう?」 国際カップルが必ず遭遇する難問です。

 昔、青年の船で日本のやってくるインドネシア人の受け入れをしたとき、ムスリムだったものですから、豚肉は駄目(スープの出しでも豚を使ったものは駄目)。アルコールは駄目、生魚は食べられないetc。”何を食わせればいいの?と考え込んでしまいました。

 幸いなことに大方のロシア人はそういった禁忌はなく、好き嫌いの問題だけですが、これが結構多かったりするので困ります。大丈夫!と言いつつ口にしたら食べられなかったり(同様のことはこちらにもありますが)、なにより、ウラジオストクに会いに行った時によく観察しておくことをお薦めします。

 好き嫌いは個人差があるの一概に言えませんが、一般的にテンプラは違和感なく食べてくれます。箸が上手に使えないことでしょうから、天汁の小鉢にテンプラをつけることには苦労するでしょうが、私はオンザロックの氷などを挟むトンクの小ぶりなものを用意しました。

 皿に持ってナイフフォークでテンプラを食べてもらってもよいのですが、それも無粋な気もします。もう一つの手段は抹茶と塩をよく混ぜてお茶漬けの元を作り、これをテンプラにかけて食べてもらう方法もあります。

 海老天とサツマイモのテンプラを交換しろとむちゃくちゃな要求を突きつけてくることがありますが、北方領土と引き換えに交換に応じてください。

 焼肉なども違和感なく食べてくれる料理ですが、タレにつけて食べるよりも塩コショウのほうが好まれる傾向があります。

 ロシアの名物シャシリクが基本的に塩コショウだけの料理と言うこともありますが、肉を食べつけているのでアミノ酸のうまみに馴染んでいることや、焼肉のタレのニンニク臭が好みに合わないなど人それぞれだと思います。

 焼肉料理ではモツなどの内臓系は食べたことがない人が多いようですし、肉の脂身も好まない人が多いようです。

 すき焼きも評判が良い料理ですが、生卵を絡めて食べる習慣がないので、生卵に違和感を感じる人もいるようです。こうしたものも慣れの問題だと思います。

 慣れないでもらうとありがたいのが寿司で、イクラはロシア語でクラスナーヤ・イクラ(赤いイクラ)と呼ばれ食べられていますが、日本のイクラのように醤油で味付けしたものではありません。生臭くて嫌う人も少なくありません。

 ウニもあまり食べつけていないので、ウニと玉子の等価交換に応じてもらえます。実は私もウニは食べられなかったのですが、好き嫌いの多い相手のおかげで”もったいない”と食べられるようになってしまいました。

 海辺のウラジオストクは魚になれている人たちが多いですが、日本人ほど食べつけているわけではありません。100円寿司の安い皿のネタが好まれるのでありがたいです。

 ロシア全般に日本食ばやりですが、寿司は好まれています。

 魚はロシアでも調達できますが、奥さんが里帰りする時に向こうで寿司を披露したいといったら、散らし寿司の元をもたせてやればよいでしょう。

 日本式の卵焼きも喜ばれます。溶いた卵にしょうゆと味の素を少々。半熟を好まない人も多いのでこの当たりは様子を見ながらですが、砂糖が入った出し巻き玉子は焦げやすく作るのも難しいので、しょうゆ味の卵焼きなどよいかもしれません。最近は日本でも玉子かけご飯が流行ったおかげで、玉子かけご飯用にタレも出回っているようで、これを溶き卵に入れて焼いても面白いかもしれません。生卵を食べるのは日本人くらいのものと思ったほうがよいでしょう。向こうの卵なんか恐くて生で食べられませんが。

 味噌汁も匂いが嫌と言う人もいます。これも好き嫌いの問題なので一概には言えませんが、最近はウラジオストクでもパックに入った生みそ式の味噌汁の元を売っているので、以前よりはなじみがある食べ物だと思います。おわんに口をつけて飲むことに慣れていないので、いきなりおわんに出してもどうやって飲めばよいのか戸惑うようです。私は最初のうちは陶器のマグカップに入れて出しました。味噌汁とパンが合うことがわかるようになれば嬉しいいのですね。

 麺類は長い麺をつるつると食べられない人もいます。世界的に普及している日清のカップヌードルなども、USAでは麺を短くして売っているようです。

 蕎麦も食材としてロシアにありますが、これはまともな穀物が取れない地域で作る貧しい食べ物なのであまり喜ばれません。蕎麦よりはうどん(それも手の裏うどん)のほうが好まれるでしょう。

 ダムダムなどと呼ばれるロシア風肉じゃがです。肉とジャガイモとにんじんとたまねぎ。素材は日本の肉じゃがと同じです。

 コンソメの元を使ってダシをとったりしますが、強い火で肉と野菜を炒め、そこに水を注いで煮るだけでそこそこのダシは取れます。大豆を入れたり、バターを入れて風味付けする家庭もありますが、寒い冬にはとても嬉しい料理です。

 日本の肉じゃがも喜ばれる料理です。少し甘いかな?くらいに甘みを強くしてやればまず問題ないでしょう。ロシア風肉じゃがよりも日本の肉じゃがのほうがおいしいと言う人さえいます。

 ロシアでは牛肉よりも豚肉のほうが高価です。

 ロシア風ピラフ。米を炊く習慣がないので、フライパンで煮て野菜や肉と一緒に炒めて食べます。

 ウラジオストクの米は中国からうるち米が入ってきますが、他の地域では細長いインディカ米や陸稲などが主で、米は味がないと思い込んでいる人も多いです。

 日本に来てもしばらくは米だけでは食べられないので、バターライスやチャーハンにして味付けして食べたり、手っ取り早いのはふりかけです。

 私など自分が作っている米を「味がない」と評されるのは大変遺憾ですが、まぁ、しょうがねぇわな。と腹にしまってはウエストが太くなっています。

 ロシアの米は米選が悪いので細かい石が入っていることも多く、噛むとジャミっとくちの中で鳴ることがあります。

 朝食の光景です。前日の残り物のスープにゆで玉子、ハム、プレーンオムレツ、ビーツ(砂糖大根)の漬物。そしてパン。

 決して手の混んだものではありません。が、漬物にしてもスープにしても、一つ一つの食材は母親が手間隙かけて仕込みをしたもので、家庭の基本はここにあると思います。

 あまり意識過剰になって手を焼くこともありません。「き新田者を食いたければ自分で作れ」と言うのが本音ですが、それをこちらから言うと角が立つので、誰か別の人に言わせるのが賢明です。

 いろいろと食べ方など工夫して独自の家庭料理を作ることは良いと思います。押し付けても反発するだけです。

 食べ物の好き嫌いにマニュアルはないので、一言で言うことはできないのですが、気分よく食べてもらうことが何より大切なことです。そのためにはこちらも気分よく食べることです。

06.3/3