大動脈

 友人と作っている福祉・介護用品製造の会社では主に中国で製品を作っています。

 特許専売製品なので今までにない製品もあるのですが、こういうものに目をつけるのは北欧やドイツの企業。そちらに向けて荷物を出荷するようになりそうです。

 北極海経由で船で運べる夏の季節は良いのですが、冬になると北極海が氷で閉ざされるので荷物を船で運ぶことも困難になります。

 そこで浮上したのがユーラシアを横断する大動脈、シベリア鉄道でヨーロッパに運んでしまおうと言う案。

 実際、ドイツやスウェーデンの企業が中国で作った製品をシベリア鉄道で運んでいるのですから、実績は十分あるはずですが、本当に大丈夫?と心配になるのは、ソビエト崩壊後の流通混乱の記憶があまりにも大きいからでしょう。 

 ウラジオストクからモスクワまで9000kmの道のりを特急の客車で一週間。気の遠くなるような道のりです。列車の中に「生活」が持ち込まれる大移動です。

 「時間」の概念がおかしくなるようですが、近代化される以前の人間の概念なんてこういうものだったのかもしれません。

 厳格な北欧やドイツとやり取りしていると、常に「リアルタイム」を意識しなければなりませんし、そのハードルが高いことに戸惑うほどですが、「それが重要なことなの?」と腹立たしく思えるような自己満足のための「論理完結」を感じることもあります。

 ロシアや中国の視線から私たち日本を見た場合、彼らも同様のことを感じるのかもしれません。ゾーリンゲンのかみそりは切地が鋭いでしょうが、ロシアはドゥビヌーシカ(棍棒)です。

 情報は電気信号に変えられて瞬時に各地へ移動できますが、物資はまだまだ原始的に移動するしかありません。

 「ウラジ・ヴォストーク」”東方を征服せよ”凍らぬ港を求めて帝政ロシアが鉄道を敷き始め、ハルビン、大連などの中国東北部に街を築き、その脅威が日露戦争を招き、帝政ロシアが衰退しソビエト革命がおき、やがてそのソビエトも死んでいく。

 シベリア鉄道が本来の存在意義を示すようになるまで100年。長過ぎる時間をかけてアジアとヨーロッパの動脈が機能し始めたと思います。

 軍事物資や兵士、強制移民や捕虜を運んだ列車が、要約「人のため」の輸送手段として機能しています。

05.7/18