冬ごもり
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冬を生き残るための動物の能力に「冬眠」「冬ごもり」があります。「冬眠」と「冬ごもり」は違う行為だそうで、エネルギーの消費を極力落とすために体温を下げ、仮死状態で冬を越す爬虫類や両生類などの眠り方を「冬眠」といいます。「冬ごもり」は穴の中などで極力動かないで体力を温存する熊などの冬のすごし方です。 ヒグマとツキノワグマでは冬ごもり中の刺激に対する反応が違い、何かの刺激で目を覚まして外に出てくる眠りの浅い冬ごもりがヒグマ。なかなか目を覚まさないのがツキノワグマだそうです。 今はやらなくなってしまいましたが、私の住む山奥では熊狩りと呼ばれる冬の猟がありました。雪のない季節に熊は冬ごもりをする穴を探しておき、都市が開け雪が積もったころに寝込みを襲います。 昔は5尺5寸と呼ばれる槍を持って、熊打ちが穴の中に体を突っ込んで熊を突き刺したそうですが、槍の長さが6尺では長すぎて穴の中で自由が利かない、5尺では短すぎて熊に引きよせられてしまうというので5尺5寸だそうです。100年以上昔のやり方で、時代は飛び道具です。 熊撃ち名人と呼ばれる老人も何人かいました。熊用の猟銃は引き金の形状が違い、引き金が二本ついています。より確実に発射できるように別々になっているのだそうです。 熊撃ち名人たるやさぞ鉄砲の腕も達者と思いきやそうではなく、離れたものをうたせてみるとまったく当てられない腕前が多かったです。それもそのはず、穴から出てきた熊の口の中に銃口突っ込んでぶっ放すだけですから、腕よりも度胸です。 私が知っている名人もその昔は満州に出兵していたそうですが、ぜんぜん敵に弾は当たらないし、顔が肩からぶら下がっているような猫背の体系ともっそりとした性格のおかげで、さんざん上官にイビリ倒されたモワっとしたおじいさんでした。冬の生活費稼ぎの一環で猟師をはじめたものの、まったく弾が獲物にあたらないので熊撃ちになったといっていました。 前もって当たりをつけておいた穴の中に火をつけたボヤなどを突っ込んで熊をいぶりだします。危険極まりない行為ですが、冬の熊は半分寝ぼけ眼ですので、前足が穴たら外に出るまでは意外とゆっくり動くそうです。両前足が穴から出てしまうとそこから先は敏捷ですが、その前に撃ち手が熊の頭にズドンと至近距離から発射です。 熊といったらロシア人。習性が似ています。 仕事ややることがなければひたすら寝ているところはまさに熊の冬ごもりです。これも合理的な理由があるのだそうで、ベッドにはいって寝ていれば余計なエネルギーもお金も使わないので、とても有効な休日対策なのだそうです。 今の時期でしたら休日は郊外のダーチャで野菜作りなどやることがありますが、冬になると休日の仕事もなくなります。しかも、停電や暖房のストップは頻繁でしたから、ベッドにもぐりこんで寝てすごすのが最も合理的な休日の過ごし方だったそうです。 一日の大半を寝てすごせば、夜寝られないのではなかろうか?と心配になりますが、それはそれで眠れるのですから不思議な生態を持っています。 寝だめ食いだめはできないといわれますが、あの人たちは違うようで、ここぞという時には2−3日徹夜してもびくともしません。基礎体力の違いを痛感させられる時です。 私など4当5落(4時間睡眠なら合格、5時間寝たら不合格)と言われた受験世代の残党ですから、寝ることに対して「無駄」の概念がずいぶん残っていました。ただの強迫観念だけだったのかな?と感じるのは、私たちが寝る間も惜しんでやったことを、彼らは集中力で乗り越えてしまうことで、この切り替えが上手にできないでむしろ時間を浪費しているのはこちらなのかな?と考えてしまうこともあります。 ドストエフスキーの「賭博者」にこんな言葉が出てきます。 "ведь, право, неизвестно еще, что гаже: русское ли безобразие или немецкий способ накопления честным трудом?" まあ、現実にロシア式の滅茶苦茶と、ドイツの誠実な勤労による蓄財方法と、どちらが醜悪なのかいまだにわからないでしょう? 05.07/5 |