独立
|
友人の日露カップルのロシア人奥さんは教育ママ。二人の息子たちに良い教育を与えるために孤軍奮闘しています。元々大学教授を両親に持つ女性だけになおさらなのかもしれませんが、しつけと教育に関しては目の色が変わります。と言っても、元々緑色の目をしています。 日本の教育ママと呼ばれる人たちとの違いは、肩書き重視で子供の七光りにあやかろうとする打算はなく、いかに子供たちを独立させて自分は好きなことをするための下準備と言う感じがします。 子供のために物や形の財産を残そうなんて意識はさらさらなく、どんな社会にでても渡り合える能力と品格を身につけさせるかに主眼が行って手間隙かけているような気がします。 彼女が言うには日本的な親子関係は子供の自立を妨げる甘えだそうで、愛する時には徹底して愛して突き放す時は厳しく突き放すのだそうです。教育やしつけは強制することで厳しさを伴わなければならないと、眼の中に入れても痛くないほどかわいがっていた息子が幼稚園の時に、一人でモスクワ行きの飛行機に乗せて実家までの旅をさせています。 ソビエト崩壊を目の当たりにしてきた世代なので、一度枠の中に入れば一生安泰なんてことは信じていませんし、子供に老後の世話を見てもらおうなんてこともまるで考えていません。私は子供の人生の邪魔になりたくはないし、子供が私の人生の邪魔になるのも望まない。 早く自分の手を離れてくれれば、後は自分で道を切り開けばよいと、ベタベタした親子関係など眼中にないようです。そのためにもしっかりと自立できる人間に育てるのだと申しています。弱いものは死んでいく厳しさを持つ環境で生きてきた人たちです。 しばしばロシア人との間に家族感覚の違いを感じることはありますが、最も基本的な親子関係からして違うのだなと言うことがわかります。自分の人生と、子供の人生は別物と冷ややかな個人主義を感じさせますが、保護が必要な幼い子供には最近の日本で希薄になったように感じる「深い情」を持って接しています。いつも母親と一緒に子供たちはいますが、時が来たらばっさりと切り離すのでしょう。 子供に老後の面倒見てもらうより同じ老人同士で寄り合って助け合ったほうが話も合うし気兼ねもしないと、介護保険や老後の不安で揺れ動く日本から見ればうらやましい限りですが、「日本的美徳」が通用しないのかな?と言う懸念もあります。 家庭感覚、家族感覚については中国人と日本人は近い部分が多くて、それほど抵抗なく移行できるようですが、ロシア人は根底から違うのでなかなか受け入れがたい部分もあります。 「夫のことを愛しているけれど、もし彼が先に死んで、私にチャンスがあれば、別の男性と結婚するかもしれない。だって一人で生きてもさびしいでしょう。」などときっぱりと言われると、年齢差のあるカップルなど心中穏やかではありません。 実際、私のウラジオストクの友人のお父さんなど、3年前に奥さんに先立たれて、毎日泣き濡れていたのですが、しっかりと別のガールフレンドを作っており、亡くなった妻を思い出して泣きながらもちゃっかり再婚しています。息子も娘も、「父の幸せのため」と容認しています。 仲の良いご夫婦だったので、まさか?と思いましたが、ロシア人的感覚では「当たり前のことじゃないの?」と冷ややかです。よくよく若い時代に夫婦の片方がなくなったときでもなければこういう再婚もないようですが、死に水を取ってもらうことや同じ墓に入るなんて「日本的甘え」なのでしょうか。 日本的家庭を作りたければ同じ日本人と結婚すれば良いのですから、捨ててかからねばならないこともあるのが国際結婚のリスクかもしれません。もちろん全てがここまで極端ではないのですから、落としどころは各家庭によって違うでしょう。 日本的なべったりした夫婦関係や恋人関係を持ち込もうとすると肘鉄を食らうこと請け合いですが、べったりする時ときっぱりする時の切り替えのダイナミズムの振幅差は大きいです。 夫婦だから、親子だから、恋人だから「ここまでは許されるだろう」と言う甘えと打算は常に見抜かれるので、独立した人間同士が同じ視線で向かい合うことは厳しいものです。でも、これが世界標準なのかもしれません。 05.07/27 |