クリル

 プーチン大統領来日もたいした話題にならず、北方領土問題も何の進展もないまま終了してしまいました。領土問題=平和条約締結=経済協力と三位一体で、平和条約のない国に経済進出してもいつひっくり返されるかわからないし、そのためには領土問題。

 我々は北方領土と呼んでいますがロシアではクリル、南千島諸島と呼んでいます。北と南、これだけでも概念の違いがあります。ロシア人通訳の友人が”北方領土”と始めて耳にしたときに”北極海にあるのだろうか?”と思ったそうです。

 トヨタなどロシアに進出する企業も増えてきましたが、平和条約なんてなくても経済協力できるじゃないかと思われてはそれまでです。煮え切らない、割り切れない夫婦間交渉のようなあやふやなやり取りが両国政府が繰り広げています。

 報道は”悪意”の代弁者のようなものですから、両国が両国に関する報道をする時は悪いことばかりで、それを読者が求めていると勝手に思い込んでいるようです。

 地盤沈下して海に沈む日本の空港について報道しても、それに対してどういった新しい技術で対処しているのかは報道しないので”こういった技術があるのか○○にも応用できるぞ!”と前向きな発想が生まれることもなく、”所詮、この程度のものさ”と自己満足で終わってしまいます。

 北オセチアのテロリストによる学校占拠事件で、軍が一味を片っ端から狙撃する光景を見て”なんとまあ野蛮で残酷な連中だ!”と思っても、万一自分もしくは家族が人質あるいは犠牲になったときに”犯人を皆殺しにしろ!”と叫ぶ自分の姿を想像できない。

 ”ある事態が起きた”報道ができるのはそこまでで、そこからどうやって”より良い方向”に持っていくかを考えるのは自分自身だと思います。

 ロシアの日本に対する報道はおおむね日本にとって心地よいものではありませんが、たまには良いことだって報道します。

 写真の17歳の少女エカテリーナさんは国後島に住む少女。4年前、不運にも足を骨折して、その骨折した足の骨にバクテリアが進入し壊疽を起こす難病になってしまいました。

 北方領土の急病・難病患者がビザなしで日本の病院で治療を受けられる相互条約の元で、彼女は根室の病院に運ばれ手術を受けることになります。

 彼女は日本で5ヶ月間過ごすことになりますが、家族までが彼女と一緒に日本の来ることができるわけではありません。家族がVISAをえて来日するまで、親元を離れて1人異国の病院で治療を受けました。

 このとき、彼女を精神面で支えたのが日本の病院のナース達で、彼女が第二の母と慕う日本のナースの名前なども報道されました。

 何より、この経験から彼女は自分の将来を見つけ出し、自分を支えてくれた日本のナースのようになろうと将来の生き方を決めたそうです。たまにはいい話も報道しています。

 北方領土島民の意識調査では61%が日本への島の譲渡に反対。過半数を超える人々が反対とは日本側から見ればショックでしょうが、見る角度を変えれば、彼らはロシア人なので当然のこととは思っていますので、意外なほど少ないなと私は感じています。

 オイルマネーで潤うモスクワも北方領土住民の行き来をロシアに向けるために設備投資などその金額を増やしているようです。

 これに対して、とあるウラジオストク市民は”あんなところにお金つぎ込むならウラジオストクを何とかしてよ!停電はどうなるの?断水はどうなるの?暖房だって止まってばかりじゃないの!モスクワはウラジオストクなんかロシアじゃないと思ってるの?”と怒っています。

05.11/25