渋滞

 ウラジオストクは人口60万人弱の街ですが、自動車の登録台数は20万台と、数字の上では3人に1人が自動車を保有している街です。

 ロシアは国土こそ広大な大陸ですが、ウラジオストクはその大地からちょっぴりはみ出した小さな半島です。ロシア的な「広大」とはおよそ無縁で、ごちゃごちゃした街です。道路も狭く、市民が自家用車を足代わりにすることなど思いもしなかった時代の街の作りです。 朝夕の渋滞はウラジオストクの名物です。

 渋滞でイライラして自動車の窓から顔を出して怒鳴っているのは、なぜか女性ドライバーが多いのには驚きます。

 ウラジオストク市民の自動車はそのほとんどが日本の中古車、日本よりも日本車を多く見かけます。日本の中古車と言う事はハンドルが右側にあるので、自動車が右側を走るロシアでは運転席は道路の外側になります。

 渋滞の道路を歩いていて、いきなり窓を開けて怒鳴られてびっくりしたことがあります。別に私に対して難癖つけているわけではないのですが、こちら側の窓を開けて辞書にも載っていない何だかわけのわからない言葉で怒鳴りつけられたような気になり、後味が良くないものです。

 日本からウラジオストクに行くと「随分交通マナーが悪いな」と感じることも多いものですが、ハルビンからウラジオストクに入ると「なんてジェントルなんだ」と間違いなく思うので、中国の方が比較にならないほど荒っぽいです。

 一番違うと感じるのはクラクションがなる回数で、中国ではクラクションを鳴らすのは日常的な行為、右折左折車線変更するのにウインカーなど出さなくてもクラクションを鳴らして周囲を警戒させ、急にハンドルを切るのが中国流。街中を走るタクシーはジェットコースターです。

 しかも目の前に開いている空間があれば後先考えずに鼻先を突っ込んでくるので、あっちの車線、こっちの車線と渡り歩いているうちに実は時間が無駄になっていたなんてことが当たり前が中国流。

 先を見る目はないのでしょうが、そのまま車線変更もせず渋滞でもおとなしく待っているのがロシア流。狭いウラジオストクではわき道が一方通行になっていたり、その道の行く先がとんでもない方向に行ってしまうことが多いので、多少混んでも本道で我慢した方が得策です。

 街の規模や交通量に比べて信号の数も少ないので、自動車で走る実としてはこれはこれでありがたいのですが、道路を横断するときなど困ります。

 大きな通りは6車線8車線ありますし、けっこうなスピードで自動車がかっ飛んでいます。こうした通りには何箇所か地下をわたる通路がありますが、それが近くにない場合、タイミングを見計らって道路を横断する人々も多いです。

 スピードを出して走っているように見えるが、道路を横断する人がいることもいる事を想定して走っていると彼らは言いますが、見ていても恐いものです。急に飛び出してこなければはねるような事はないと言いますが、早足に歩く横断者がいるとヒヤッとするものです。

 数年前、独自の健康法で鋼の肉体を作り、「槍でも俺の体を突き通す事はできない」と豪語していたハルビンの漢方薬店のオヤジが、タクシー跳ね飛ばされあっけなく死にました。熊のようなロシア人だって自動車に跳ね飛ばされれば御身ご無事ではいられません。行く度に自動車事故を見かける回数が多くなっている気もします。

 友人いわく、昔なら事故死といえばウォッカを飲みすぎて路上で眠りこけて凍死することで、これは当人の不注意だった。今はどこから悪魔(交通事故)がやってくるのかわからない。これは西側の悪魔です。

05.1/26