踊るロシア人
| 楽しい事があるとイタリア人は歌い、ロシア人は踊るのだそうで、人前で表現する事が苦手なシャイな日本人と違うところです。新年のカウントダウンなど音楽と共に老若男女一斉に踊りだします。「祭り」のコラムでも恍惚状態で踊り狂う軍服姿のおじさんの写真を紹介しましたが、「楽しいときは大いに楽しむ」が基本です。
どうしてもダンスの果てまで下心を持ってしまう日本人と違い、ダンスそのものを楽しめるのも風土の違いかもしれません。 「だってあなた、考えてもごらんなさいよ、毎日毎日耐えなければならないことばかり、辛いことの方が多いのだから楽しめるときに楽しまなくていつ喜べるの?」先の事を憂うときは憂いて、楽しむときは心を解き放って楽しむ。こうして気持ちを切り替えながら生き延びてきたそうです。 ロシアといえばコサックダンス(ビデオ映像)が有名ですが、元々は中央アジアの騎馬民族の踊りです。体操の床の競技のようなものなので、よほど足腰が強くなければまねはできません。少ないウォッカでも激しく踊ればより充実したヨッパライライフをおくれます。 伝統的な踊りといえば「村歌」(ビデオ映像)の類で、これは決して激しい踊りではありませんし、農村の収穫や祭りなどで伝承されてきた伝統的な歌や踊りです。ロシア的な哀愁漂うメロディーよりも明るく軽快な曲が多いです。 ロシアンダンスの特徴的な動きはクルクル回る(ビデオ映像)動きで、トリプルアクセルや4回転サルコを決める選手は出てこなくとも、なるほどフィギュアスケートが強いわけだと思わせる基礎がここにあったりします。 ディスコでも人が集まったときのダンスでもなぜかクルクル回りだす。くるりと回った瞬間「この曲の主役は私よ!」と言わんばかりに嬉しそうな表情になります。ロシア民謡の世界(ビデオ映像)だってクルクル回れば主役です。 ロシア民謡の歌唱法は頭のてっぺんから声を出す独特な発声で、音が暴れて金属的な声に聞こえます。日本民謡の歌唱法にも似ています。クラシック音楽で用いられる腹のそこから声を出すベルカント唱法と異なります。反響の多い石造りの建物の中で歌う声と、野良仕事の最中や祭りなどの外で歌う声では成り立ちが違います。 隙間が多く、音を吸収しやすい日本の家屋ではギターよりも三味線、フルートよりも尺八の音の方が音が伝わります。ガット(羊腸)やナイロン弦を使うギターが、アメリカ大陸に渡り金属の弦に変化したのも柔らかい音より硬い音の方が反響のないところでは伝わりやすいためですし、ピアノだってドイツからアメリカに渡ったスタインウェイは金属の響板をつけることで、騒がしい木造の酒場でも響き渡る音を作り出しました。 ロシアの哀愁を帯びた旋律に多きな影響を与えたのはロマとよばれる人たちです。ジプシーと言うよび方はヨーロッパの人たちが彼らをエジプトから来たと思い込んでいた名前なので今は使われない呼び方になりました。元々はインドから流れた他民族だそうです。 ロシアにもロマの流れをくむ人々はたくさんおり、ロマの音楽や踊り(ビデオ映像)もあります。フラメンコの源流だけに、妖艶で激しい舞踏に思えますが、実際冷静に目にすると思ったほど動きは激しくありません。体力の限り飛び回るコサックダンスよりも激しく感じるのですが、そう見えてしまうのは「情念」のパワーかもしれません。 05.5/7 |